○下野市環境基本条例

平成24年3月27日

条例第4号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第8条)

第2章 環境の保全及び創造に関する基本施策

第1節 環境施策の基本方針(第9条―第12条)

第2節 環境の保全及び創造を推進する基本施策(第13条―第23条)

第3節 施策の推進体制等(第24条・第25条)

第3章 環境審議会(第26条)

第4章 補則(第27条)

附則

下野市は、北には雄大な日光連山を、南には筑波山の秀峰を仰ぎ見ることのできる美しい景観の下、鬼怒川、田川、姿川の豊かな水の恵みを受けた肥沃な平野が広がり、平地林や屋敷林が多く残され、自然災害の少ない豊かで美しい田園と都市が形成されています。

この恵まれた自然環境が育む下野市は、古来より多くの古墳が造られ、東山道が通り、東国における仏教文化の拠点として白鳳時代には下野薬師寺が、奈良時代には下野国分寺・国分尼寺が建立され、また、江戸時代には日光街道の宿場町として栄えてきた歴史と伝統を有しています。

近年では、鉄道駅及び主要幹線道路網の交通環境をはじめ、先端医療施設による地域医療の充実、豊かな農産物を活かした食文化の醸成など、安心、安全な居住都市へと発展してきています。

しかし、近年の急激な都市化は、大気汚染、水質汚濁、廃棄物の不法投棄問題など生活環境を悪化させるとともに、野生動植物の生息空間となる身近な緑地や水辺の減少をもたらすなど自然環境を劣化させています。

また、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会構造及び資源・エネルギーを浪費する私たちのライフスタイルは、地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の消失、種の絶滅等の地球規模での環境破壊を招来させ、私たちの生存基盤である地球環境を脅かすに至っています。

こうしたなか、東日本大震災及びそれに伴う原子力発電所事故による放射性物質汚染は、私たちの暮らしや産業に深刻な事態をもたらし、安全で健康な暮らしやエネルギーの有効利用、自然との共生のあり方について、見直していく必要が生じました。

私たちは、健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受し、健康で文化的な生活を営む権利を有するとともに、子々孫々のために、この環境を保全することはもとより、より良好なものにして、引き継ぐ責務を有しています。

今、私たちは、このような課題を解決するために、一人ひとりが環境に与える影響について理解し、生活全般を環境への負荷の少ないものに改め、持続可能な社会を構築し、地球環境の保全に貢献していかなければなりません。

このような認識に基づき、私たちは、下野市の豊かで美しい自然及び歴史的・文化的環境を維持、向上させ、その恵沢でもある都市と農村が共生する特長を活かし、物やエネルギーを地域内で循環させる地産地消の社会システムを構築し、だれもが健康で生きがいを持ち、豊かな心のふれあいがある持続可能な地域社会の実現を目指し、世界に発信していこうと決意し、この条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに市、市民、事業者及び滞在者(以下「市民等」といいます。)の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民等の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とします。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによります。

(1) 環境の保全及び創造 安全で快適な生活環境(人の生活に密接な関係のある財産、動植物及びその生育環境を含みます。以下同じとします。)、良好な自然環境その他健全で恵み豊かな環境を保持し、保護するとともに適切に環境の向上を図りつつ、積極的により良好な環境を創り出すことをいいます。

(2) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいいます。

(3) 持続可能な社会 環境に対する負荷をできるだけ少なくした社会活動が営まれ、かつ、自然とのふれあいが保たれ、私たちの子孫が私たちと同じような環境の恵みを受けながら生活を営んでいけるような社会をいいます。

(4) 地球環境の保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体若しくはその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民等の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいいます。

(5) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含みます。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物採取のための土地の掘削によるものを除きます。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいいます。

(6) 地産地消 地域で生産したものを地域で消費し、地域で消費するものは地域で生産することで、生活の基本となる食料、エネルギーなどの地域資源を極力地域内で循環することをいいます。

(7) 事業者 市内で事業活動を行う者をいいます。

(8) 滞在者 通勤、通学、旅行等で市に滞在する者(市を通過する者を含みます。)をいいます。

(基本理念)

第3条 環境の保全及び創造は、健全で恵み豊かな環境が市民等の健康で文化的な生活に欠くことができないものであることにかんがみ、本市の特長を生かしつつ、この環境を将来にわたって維持し向上させ、現在及び将来の市民等がこの恵沢を享受できるよう積極的に行うものとします。

2 環境の保全及び創造は、歴史と伝統の下、人と自然が共生し、市民等が快適に生活できる都市と農村の実現を目的として、生物多様性の確保に配慮しつつ、自然環境、歴史的・文化的環境、生活環境及びまちの景観を良好な状態に維持し、向上させることによって行うものとします。

3 環境の保全及び創造は、環境への負荷の少ない持続可能な地域社会を構築することを目的として、市及び市民等の公平な役割分担と協働の下に積極的に行うものとします。

4 地球環境の保全は、人類を含む生物すべてにかかわる課題であるとともに、市民等の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題でもあることにかんがみ、すべての事業活動及び日常生活において積極的に推進されるものとします。

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」といいます。)にのっとり、その自然的、社会的条件に応じた環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、それを積極的かつ効率的に実施する責務を有するものとします。

2 市は、前項の施策の策定及び実施に当たり、広域的な取組を必要とするものについては、国及び他の地方公共団体と協力して行うよう努めるものとします。

3 市は、基本理念にのっとり、自ら率先して環境の保全及び創造に取り組むとともに、市民等の良好な環境の保全及び創造への取組を支援するように努めるものとします。

(市民の責務)

第5条 市民は、基本理念にのっとり、日常生活における資源エネルギーの節約等環境への負荷の低減に努めるとともに、廃棄物を投棄又は放置するなどして、良好な環境を損なうことのないようにする責務を有するものとします。

2 市民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境施策に協力する責務を有するものとします。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、事業活動を行うに際しては、環境への負荷を低減し、公害を防止するとともに、自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有するものとします。

2 事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工、販売その他の事業活動を行うに当たっては、拡大生産者責任の原則に基づき、環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するなどして、廃棄物の発生抑制と減量化を図るとともに、適正に処理する責務を有するものとします。

3 事業者は、基本理念にのっとり、環境保全及び創造に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境施策に積極的に参画し、協力する責務を有するものとします。

(滞在者の責務)

第7条 滞在者は、基本理念にのっとり、第5条に定める市民の責務に準じて環境の保全及び創造に努めるとともに、市が実施する環境施策に協力するよう努めるものとします。

(市及び市民等の協働)

第8条 市及び市民等は、環境の保全及び創造に寄与するため、第4条から前条に定めるそれぞれの責務を果たし、協働するよう努めるものとします。

第2章 環境の保全及び創造に関する基本施策

第1節 環境施策の基本方針

(環境優先の理念)

第9条 市の施策は、環境の保全及び創造に関する施策を基底として、これを最大限に尊重して行うものとします。

(施策の基本方針)

第10条 市は、この章に定める環境の保全及び創造に関する施策の策定及び実施に当たり、次に掲げる事項を基本として、総合的かつ計画的に行われるよう努めるものとします。

(1) 大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されて、人の健康が保護され、野生動植物の種の保存その他の生物多様性の確保が図られること。

(2) 健全な水循環の確保、エネルギーの効率的利用、自然エネルギーの活用、廃棄物の発生抑制、資源循環の促進等環境資源の保全及び有効活用を図り、社会経済活動における環境への負荷を低減すること。

(3) 歴史的文化的遺産が保護され、平地林、屋敷林等の身近な樹林地及び河川、農業用水路、ため池等の水辺地に恵まれた良好な里地環境を保全及び創造するとともに、うるおいに満ちた生活空間が形成されること。

(4) 再生可能な環境資源を利用する地域経済の促進を図り、地域自給及び循環的な生活を営む地産地消の社会システムづくりを進めること。

(環境基本計画)

第11条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」といいます。)を定めるものとします。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとします。

(1) 環境の保全及び創造に関する目標

(2) 環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な施策の大綱

(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 市長は、環境基本計画を定めるに当たり、市民等の意見を反映させるため、必要な措置を講ずるとともに、第26条に定める下野市環境審議会の意見を聴くものとします。

4 市長は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なくこれを公表するものとします。

5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用するものとします。

(環境に関する報告)

第12条 市長は、環境の状況及び環境の保全及び創造に関する施策の実施状況を明らかにした報告書を定期的に作成し、これを公表するものとします。

第2節 環境の保全及び創造を推進する基本施策

(環境への配慮)

第13条 市は、施策の策定及び実施に当たり、環境基本計画との整合を図るとともに、環境への負荷が低減されるよう十分に配慮するものとします。

2 市は、市民等が自発的に環境への負荷の低減を図ることとなるように、環境への配慮について必要な措置を講ずるものとします。

3 市は、環境に影響を及ぼすおそれのある事業を行おうとする事業者に対し、あらかじめその事業が及ぼす影響について事業者自らが調査し、その結果に基づきその事業が環境に配慮されたものとなるように、必要な措置を講ずるよう努めるものとします。

(環境管理の促進)

第14条 市は、環境への負荷を低減するための環境管理の体制を整備するとともに、市民等が環境への負荷を低減するよう自主的な管理を行うことを促すために必要な措置を講ずるものとします。

(環境の保全上の規制等)

第15条 市は、公害を防止するために公害の原因となる行為に関する規制、指導、助言、報告の徴収その他必要な措置を講ずるものとします。

2 前項に定めるもののほか、市は、環境の保全及び創造を図る上での支障を防止するため、必要があると認めるときは、適切かつ迅速に規制、指導、助言等の措置を講ずるものとします。

(助成等)

第16条 市は、市民等が環境への負荷の低減を図るための施設の整備その他環境の保全及び創造に関する活動を促進するために必要があるときは、適正な助成その他の措置を講ずるよう努めるものとします。

(自然環境の保全等の推進)

第17条 市は、水と緑の良好な自然環境及び多様な生態系を保全及び創造し、人と自然との豊かなふれあいが確保されるように、必要な措置を講ずるよう努めるものとします。

2 市は、自然環境の保全に資するため、地域を象徴する平地林、水辺環境、その他の地域を指定するなどして、適正な保全に努めるものとします。

3 平地林及び屋敷林の所有者又は管理者は、その所有し、又は管理する平地林等が、地域における豊かな自然環境を形成していることにかんがみ、その適正な保全に配慮するものとします。

(資源・エネルギーの循環的な利用等の促進)

第18条 市は、環境への負荷の低減を図るため、市民等による廃棄物の減量、資源の循環的な利用並びにエネルギーの有効利用が促進されるように必要な措置を講ずるものとします。

2 市は、環境への負荷の低減を図るため、市の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たり、廃棄物の減量、資源の循環的な利用及びエネルギーの有効利用に努めるものとします。

(環境保全型農業の推進)

第19条 市は、環境の保全及び創造及び人の健康を確保するため、有機農業をはじめとする環境保全型農業による営農活動を推進するとともに、地産地消の社会システムの構築に努めるものとします。

(環境に関する教育及び環境学習の推進)

第20条 市は、市民等が環境の保全及び創造についての理解を深め、活動意欲が増進されるように、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実に努めるものとします。

(地球環境保全の推進)

第21条 市は、地球温暖化の防止その他の地球環境の保全に資する施策を積極的に推進するものとします。

(環境状況の把握)

第22条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な情報の収集、監視、測定、調査等の体制を整備し、環境の状況の的確な把握に努めるものとします。

(情報の整備と提供)

第23条 市は、環境の保全及び創造に関して、必要な情報を収集するとともに、調査及び研究を実施し、教育及び学習の振興並びに市民等が自発的に行う活動の促進に資するため、これらの情報等を適切に提供するように努めるものとします。

第3節 施策の推進体制等

(国及び他の地方公共団体等との協力)

第24条 市は、環境の保全及び創造を図るための広域的な取組が必要となる施策については、国、県その他の地方公共団体等と協力して、その推進に努めるものとします。

(施策の調整及び推進体制の整備)

第25条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、市の機関相互の緊密な連携及び施策の調整を図るための体制を整備するものとします。

2 市は、環境の保全及び創造に関する施策を適切かつ効果的に推進するため、市民等と連携協力して取り組む体制の整備に努めるものとします。

第3章 環境審議会

(環境審議会)

第26条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、下野市環境審議会(以下「審議会」といいます。)を置き、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項について調査及び審議します。

(1) 環境保全の基本的事項に関すること。

(2) 環境保全に関する重要施策の実施に関すること。

(3) その他環境保全対策に関すること。

2 審議会は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する15人以内の委員をもって組織します。

(1) 公募市民

(2) 事業者

(3) 市民団体の代表者

(4) 学識経験者

(5) 関係行政機関の職員

(6) 教育関係者

(7) 前各号に掲げる者のほか、市長が必要と認める者

3 委員の任期は、2年とします。ただし、委員の再任を妨げないものとします。

4 委員が欠けたときにおける補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。

5 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定めます。

第4章 補則

(委任)

第27条 この条例の施行について必要な事項は、市長が別に定めるものとします。

(施行期日)

1 この条例は、平成24年4月1日から施行します。

(下野市環境審議会条例の廃止)

2 下野市環境審議会条例(平成23年下野市条例第3号)は廃止します。

(経過措置)

3 この条例の施行の日の前日において、下野市環境審議会条例第4条の規定により、下野市環境審議会委員に委嘱されている者は、第26条の規定により委員に委嘱されたものとみなします。

下野市環境基本条例

平成24年3月27日 条例第4号

(平成24年4月1日施行)

体系情報
下野市例規集/第8編 生/第4章 環境保全
沿革情報
平成24年3月27日 条例第4号