○下野市議会基本条例
平成25年9月4日
条例第32号
地方分権一括法の施行後、地方自治体(以下「自治体」という。)の自治権の拡大に伴い、自治体が自らの責任において裁量すべき事務も増大するなか、議会の担うべき役割や責任は以前に増して大きくなっている。
市民により選ばれた議員で構成される議会は、同じく市民により選ばれた市長と共に、二元代表制の趣旨を踏まえ、市長等執行機関との健全な緊張関係を保持しながら、監視機能、政策提言及び政策立案機能等を十分に発揮し、日本国憲法に定める地方自治の本旨の実現を使命として活動する責任がある。
議会は、その責務を果たすため、市民との情報の共有化を図り、市民意思を市政に反映させるとともに、市民福祉の向上を目指し最良の意思決定をしなければならない。
下野市議会は、議会と議員の権能と果たすべき役割を明らかにし、活動原則を定め、その理念に基づく規定を遵守することにより、市民から信頼される議会、市民に分かりやすい議会となるよう、ここに下野市議会基本条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、分権時代にふさわしい、市民に身近な議会及び議員の活動の活性化及び充実のために必要な議会運営の基本事項を定めることにより、市民が安心して暮らし、幸せを実感できるまちづくりの実現に寄与することを目的とする。
(議会の活動原則)
第2条 議会は、次に掲げる原則に基づき活動を行わなければならない。
(1) 言論の府であること及び合議制の機関であることを十分に認識し、議員相互の自由な討議を重んずること。
(2) 公平性、透明性等を確保し、民主的な議会運営に努めること。
(3) 広く市民の多様な意見を的確に把握し、市政に反映させるとともに、議員一人一人の資質を高め、政策提言及び政策立案の強化に努めること。
(4) 市民本位の立場から、市長その他の執行機関及びその補助職員(以下「市長等」という。)により適正な市政運営が行われているかを監視し、評価すること。
(5) 議会運営は、市民に分かりやすい視点、方法等で行い、積極的に情報公開に取り組み、説明責任を果たすこと。
(6) 継続的かつ持続的に議会改革の推進に取り組むこと。
(議員の活動原則)
第3条 議員は、次に掲げる原則に基づき活動を行わなければならない。
(1) 下野市議会議員政治倫理条例(平成19年下野市条例第17号)をはじめ、法令等を遵守し、市民の代表としてふさわしい行動をとること。
(2) 議員としての資質の向上を目指し、日常の研さんに努めること。
(3) 市民意見を的確に把握し、十分な検討判断の上、市政にいかすこと。
(4) 議会の構成員として、一部の団体又は地域の代表としての利害にとらわれず、市民全体の福利の向上を目指して活動すること。
(会派)
第4条 議員は、議会活動を行うため、会派を結成することができる。
2 会派は、政策を中心とした同一の理念を共有する議員で構成し、活動するものとする。
3 会派は、政策立案、政策決定及び政策提言等に関し、必要に応じて、会派間で調整を行い、合意形成に努めるものとする。
(市民と議会との関係)
第5条 議会は、市民に対し積極的にその有する情報を公表し、透明性を高め、情報の共有化を推進するとともに、説明責任を十分に果たさなければならない。
2 議会は、本会議及び常任委員会の会議のほか、全ての会議を原則公開とする。
3 議会は、常任委員会、特別委員会等の運営に当たり、市民の専門的又は政策的な識見等を議会の討議に反映させるため、必要に応じて、公聴会制度及び参考人制度を活用するものとする。
4 議会は、請願及び陳情を市民による政策提案と位置付け、必要に応じて、提案者の意見を聴く機会を設けるものとする。
5 議会は、市民の傍聴意欲を高めるよう努めなければならない。
(議会報告会)
第6条 議会は、市民に対し、議会で行われた議案等の審議の経過及び結果について報告するとともに、議員及び市民が自由に情報及び意見を交換する議会報告会を行うものとする。
2 議会報告会に関し必要な事項は、別に定める。
(市長等との関係の基本原則)
第7条 議会審議における議員と市長等とは、次に掲げるところにより、緊張関係の保持に努めるものとする。
(1) 本会議における議員と市長等との間の質疑応答は、広く市政上の論点及び争点を明確にするため、一問一答の方式で行うことができる。
(2) 議長から本会議及び委員会への出席を要請された市長等は、議員の質問又は質疑の趣旨を確認するため、議長又は委員長の許可を得て、発言することができる。
(3) 議員は、議長を経由して市長等に対し文書により質問を行うことができる。この場合において、市長等は文書により回答するものとする。
2 前項第3号の文書による質問に関し必要な事項は、別に定める。
(政策の形成過程の説明及び審議)
第8条 議会は、市長等が提案する重要な政策について、その水準を高めるため、市長等に対し、次に掲げる事項について明らかにするよう求めることができる。
(1) 政策を必要とする背景
(2) 下野市総合計画との整合性
(3) 類似する政策との比較検討
(4) 検討過程における市民参加の状況
(5) 関係法令及び条例等
(6) 財源措置
(7) 将来にわたるコスト計算
2 議会は、予算案及び決算の審議に当たっては、前項の規定に準じて、市長等に対し、施策別又は事業別の分かりやすい政策説明資料の提出を求めることができる。
(地方自治法第96条第2項の議決事件)
第9条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第96条第2項の規定に基づく議会の議決事件は、下野市総合計画基本構想及び基本計画に関することとし、この市政全般にわたり重要な計画等について、議会と市長等が共に市民に対する責任を担いながら、計画的かつ市民の視点に立った透明性の高い市政の運営に資するものとする。
(討議の原則)
第10条 議会は、議事機関として、その意思決定に当たっては、議員間の公平で自由な議論を尽くすものとする。
2 議会は、原則として委員会活動を中心に議員間の討議を行うものとする。
(調査及び政策立案)
第11条 議会は、地方自治法第100条の2の規定に基づく学識経験を有する者等による調査を必要に応じて活用するものとする。
2 議会は、地方自治法第115条の2に規定する公聴会及び参考人制度を必要に応じて活用するものとする。
3 議会は、政策立案に資するため、必要な調査、研修及び視察を行い、その結果を市民に公表しなければならない。
4 議会は、審査、諮問又は調査のために必要な機関を設置することができる。
(委員会の運営)
第12条 委員会は、所管に関わる市政の課題について、市長提案の議案等の審査、所管事項の調査及び政策提案を積極的に行うものとする。
2 委員会は、その意思決定に当たり、市民の意見の聴取に努めるとともに、委員間の十分な討議を行うものとする。
3 委員会は、市民との情報共有及び意見の聴取のために、必要に応じて意見交換会等を行うように努めるものとする。
4 委員長は、十分な討議を保障するため、公平公正な委員会運営を行うものとする。
(議員研修の充実強化)
第13条 議会は、議員の資質並びに政策形成及び立案能力の向上を図るため、議員研修の充実強化に努めるものとする。
2 議会は、議員研修の充実強化に当たり、広く各分野の専門家及び市民との議員研修会を年1回以上開催するものとする。
(議会事務局)
第14条 議会は、議会の政策立案能力を向上させ、議会活動を円滑かつ効率的に行うため、議会事務局の調査機能及び法務機能の強化に努めるものとする。
(議会図書室の設置及び公開)
第15条 議会に、議会図書室(以下「図書室」という。)を設置する。
2 図書室は、議員のみならず、誰もがこれを利用できるものとする。
3 議会は、議員の政策形成及び立案能力の向上を図るため、図書室の図書の充実に努めるものとする。
(議会広報の充実)
第16条 議会は、市政に係る重要な情報を、議会独自の視点から、常に市民に対して周知するよう努めるものとする。
2 議会は、多様な広報手段を活用し、多くの市民が議会及び市政に関心を持つよう、広報活動に努めるものとする。
(危機管理)
第17条 議会は、大規模災害等の緊急の事態から市民の生命、身体及び財産並びに生活の平穏を守るため、総合的かつ機能的な活動が図られるよう、市長等と協力し、危機管理体制の整備に努めるものとする。
2 議会は、大規模災害等の緊急の事態が発生したときは、市長等と連携し、次に掲げるとおり対応するものとする。
(1) 議長は、必要に応じて議員による協議又は調整を行うための組織を設置する。
(2) 議会は、状況を調査し、市民の意見及び要望を的確に把握するとともに、必要に応じて市長等に対し、提言及び提案を行う。
3 議会における危機管理体制に関し必要な事項は、別に定める。
(議員定数)
第18条 議員定数は、下野市議会議員定数条例(平成21年下野市条例第30号)で定める。
2 議員提案による議員定数の改正に当たっては、市民意見を参考とし、市政の現状及び課題、将来予測等を十分に考慮した上で決定するものとする。
(議員報酬)
第19条 議員報酬は、下野市議会の議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例(平成18年下野市条例第43号)で定める。
2 議員提案による議員報酬の改正に当たっては、市民意見を参考とし、市政の現状及び課題、将来予測等を十分に考慮した上で決定するものとする。
(議会及び議員の責務)
第21条 議会及び議員は、この条例の理念及び原則に基づいて制定される条例、規則等を遵守して議会を運営し、もって市民を代表する合議制の機関として、市民に対する責任を果たさなければならない。
(検証及び見直し)
第22条 議会は、この条例の目的が達成されているか否かを、議会運営委員会において検証するものとする。
附則
この条例は、平成25年10月1日から施行する。