選挙運動と政治活動
1.選挙運動と政治活動の違いは?
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が政治活動と言われています。ですから、広い意味では選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のように解釈できます。
選挙運動
「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」といえます。
政治活動
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。
2.選挙運動ができる期間は?
選挙運動ができる期間は、選挙期日の公示又は告示の日(立候補の届出の日)に立候補の届出を終えた後から投票日の前日までとされていて、その日数は選挙の種類により異なります。選挙ごとの立候補の届出の日は次の表のとおりです。立候補の届出前の選挙運動は、事前運動といって一切禁止されていることも忘れないでください。
参議院議員及び知事の選挙 |
投票日の17日前 |
衆議院議員の選挙 |
〃 12日前 |
県議会議員の選挙 |
〃 9日前 |
市長及び市議会議員の選挙 |
〃 7日前 |
事前運動の禁止はよく知られていますが、投票日当日も一部の例外を除いて、選挙運動ができません。ご注意ください。
投票日当日できる選挙運動は以下の3点です。
- 投票所から300メートル以上離れた場所にある選挙事務所を設置しておくこと。
- この場所において、この選挙事務所を表示するために、ポスター、立札及び看板の類を通じて3以内並びにちょうちんの類を1掲示すること。
- 選挙運動期間中に適法に掲示した選挙運動用ポスターを掲示しておくこと。
3.候補者が行う選挙運動は?
公職選挙法により認められた候補者が行う選挙運動は、ポスター等の印刷物や演説会等の言論などによって行われますが、その方法の主なものは次のとおりです。
ただし、選挙の種類により、その方法、あるいは数量や規格などが異なるものがあります。
- 選挙事務所の設置
- 選挙運動用自動車の使用
- 選挙運動用はがき
- 新聞広告
- ビラの配布(衆議院議員及び参議院議員選挙に限る)
- 選挙公報
- ポスターの掲示
- 街頭演説
- 個人演説会
文書図画による選挙運動は、大変細かく規制されています。うっかり選挙違反とならないよう注意が必要です。
文書図画による選挙運動は、特に認められたもの以外は禁止されています。
また、文書図画の使われ方(頒布なのか、掲示なのか)によっても細かく規定されています。
回覧版に演説会の告知を載せたり、手製のポスターやチラシなど、つい何気なくしたことが、選挙違反に問われます。
言論による選挙運動が原則自由で特定の場合だけ禁止されているのに対し、文書図画による選挙運動は、「特に認められたものしかできない」ことを充分認識しておいてください。
4.やってはいけない選挙運動とは?
次のような選挙運動は禁止されています。
戸別訪問
誰であっても、特定の候補者に投票してもらうことを目的に、住居や会社、商店などを戸別に訪問してはいけません。また、特定の候補者名や政党名あるいは演説会の開催について言い歩くこともできません。
あいさつを目的とする有料広告
候補者や後援団体(特定の候補者を推薦し支持する団体)は、選挙区内にある者に対し、時候、慶弔や激励などのあいさつを目的とする広告を有料で新聞、雑誌に掲載したり、テレビやラジオで放送したりしてはいけません。
飲食物の提供
誰であっても、選挙運動に関して飲食物を提供してはいけません。ただし、お茶や通常用いられる程度のお茶菓子や果物は除かれています。また、選挙運動員に渡す一定の数の弁当は提供することができます。
陣中見舞いとして持って行くことも禁止されています。お酒、ビールは勿論、サイダーなどの「お茶代わり」もいけません。たとえお茶菓子であっても、常識を超えるものは禁止されています。
また、選挙事務所における弁当の支給は、法律等の範囲内で行わなければなりません。選挙運動に従事する者(事務員を含む)及び労務者に対して支給できる弁当は、法令で定められています。
- 立候補届出後から投票日前日までの間に、運動員と労務者に対し、選挙事務所で食べるための弁当か携行するための弁当で、選挙事務所で渡すものだけが提供できます。
- 弁当の価格は、選挙管理委員会が告示した額の範囲内でなければなりません。
- 提供できる弁当の数も規制されています。
次の場合は違反になります
- 運動員や労務者でなく、たまたま事務所にきた人に提供すること。
- 運動員などを飲食店に連れて行って提供すること。
- 運動員などに晩酌の酒やビールを出すこと。
署名運動
誰であっても、特定の候補者に投票をするように、あるいは投票しないようにすることを目的として選挙人に対し署名を集めてはいけません。
気勢を張る行為
誰であっても、選挙運動のため人目を引こうと自動車を連ねたり隊列を組んで往来したりしてはいけません。
5.選挙運動のできない者とは?
次の者は、在職中、その関係区域内で選挙運動をすることができません。
- 投票管理者、開票管理者および選挙長
次にあげる者(特定の公務員)は、区域がどこであるかを問わず、在職中、いっさいの選挙運動はできません。
- 選挙管理委員会の委員及び職員
- 裁判官
- 検察官
- 会計検査官
- 公安委員会委員
- 警察官
- 収税官吏及び徴税吏員
次の公務員は、個別の法律(国家公務員法・地方公務員法・教育公務員特例法)で禁止されています。
- 一般職の国家公務員
- 一般職の地方公務員(その職員が勤務する役所の属する地方公共団体の区域内のみ規制)
- 国公立学校の教育公務員
その他禁止される人
- 18歳未満の者(単純労務のために使用することはできます。)
- 選挙犯罪により公民権を停止された人(停止期間中)。
6.公務員等の地位利用による選挙運動の禁止
すべての公務員(特別職、一般職を問わない)は、その地位を利用して、選挙運動はできません。また、地位利用による選挙類似行為もできません。
- すべての公務員が対象ですから、一般の職員だけでなく、現職の議員や市長、非常勤の消防団員もここでいう公務員にあたります。
- 選挙運動類似行為とは、候補者の推薦に関与したり、選挙運動の企画をしたり、後援会結成の準備をしたり、後援会に入るよう勧誘したり、文書図画の頒布や掲示をさせたり、これらの行為を援助したりするような行為です。
- 地位利用とは、職務上の組織や身分の上下関係を利用したり、許可、認可、などの職務権限を利用して選挙運動行うなど、その職務上の地位と選挙運動または選挙運動類似行為とが結びついて行われる場合。